軟骨内骨化のメカニズム
まず未分化の間葉系細胞が凝集します。中心部の間葉系細胞は軟骨細胞へ分化し、Ⅱ型コラーゲン、ヒアルロン酸、プロテオグリカンを含む軟骨基質と呼ぶ細胞外マトリックスを形成しながら、増殖し骨を伸ばします。辺緑部の間葉系細胞は軟骨膜細胞へ分化し、軟骨膜を形成します。軟骨細胞と軟骨膜細胞は共役して骨の原型を形作ります。
軟骨基質
増殖軟骨細胞は前肥大軟骨細胞を経て肥大軟骨細胞に分化します。増殖軟骨細胞はPTHrP(
副甲状腺ホルモン関連ペプチド)を分泌し軟骨の肥大化を抑制し、前肥大軟骨細胞はIhh(インディアンヘッジホッグ)を分泌し増殖軟骨細胞の増殖を促進することで、骨の長さを制御しています
*1。
PTHrPとIhhによる負のフィードバックループ*2
軟骨細胞は肥大軟骨細胞に分化し、Ⅹ型コラーゲンを産生します。軟骨細胞と肥大軟骨細胞は基質小胞とコラーゲンを介して、縦方向の細胞間隔壁を暫定的に石灰化します
*3*4。
暫定的石灰化*5
基質小胞はALP (アルカリフォスターゼ)と呼ぶ
酵素で
PPi(
ピロリン酸)を
加水分解します。
PPiの
加水分解により生成した無機リン酸は、リン酸トランスポーターを通り基質小胞内に輸送され、カルシウムイオンはリン脂質と結合するアネキシンにより基質小胞内へ
流入します
*6。基質小胞内でカルシウムイオンと無機リン酸が濃縮され、リン酸カルシウムの結晶塊が形成されます
*7。
リン酸オクタカルシウム*8
基質小胞内で形成されたリン酸カルシウム結晶塊はリボン状または針状ですが、小胞の膜を破って外界に露出すると、球状の集合体(石灰化球)になります。石灰化球は、周囲のコラーゲン細線維に接触することでコラーゲン線維に石灰化を波及してゆきます
*9。
コラーゲン性石灰化*10
軟骨膜に存在する前骨芽細胞は、肥大軟骨細胞の分泌する種々の成長因子の刺激を受けて骨芽細胞に分化します。骨芽細胞はⅠ型コラーゲンやオステオカルシンを産生し、類骨と呼ぶ細胞外
マトリックスを形成しながら、類骨に基質小胞を埋入してゆきます。骨芽細胞は基質小胞とI型コラーゲンを介して
ハイドロキシアパタイトを析出し類骨を石灰化してゆくことで、将来の皮質骨である
骨殻を形成してゆきます。
膜内骨化*11
肥大軟骨細胞はMMP(
マトリックスメタロプロテアーゼ)と呼ぶ
酵素で軟骨基質を分解し、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)で骨の外から血管を招きます
*12。血管新生にともない骨殻に存在する骨芽細胞、肝臓・
脾臓に存在する
破骨細胞の
前駆細胞などが石灰化軟骨基質に侵入します。
血管新生
破骨細胞の
前駆細胞は、骨芽細胞の分泌するM-CSF(マクロファージコロニー刺激因子)や、骨芽細胞の細胞膜上に発現するRANKL(
破骨細胞分化因子)等の刺激を受けて融合し、多核の
破骨細胞へ分化を遂げます。
破骨細胞はMMPや塩酸で骨基質を分解し、髄腔を形成してゆきます。
破骨細胞
骨芽細胞は、石灰化した軟骨基質を足場にして骨基質を産生し、最終的に自らの分泌した骨基質に埋まり骨細胞に分化を遂げることで、骨の内側に海綿骨・骨梁を形成してゆきます。
海綿骨・骨梁
骨芽細胞から分化した骨細胞は、細胞突起を伸ばし、骨内の骨細胞と、骨表面の骨芽細胞や
破骨細胞と互いにリンクし合う細胞性ネットワークを形成します
*13。骨細胞は、このギャップ結合および骨細管を通して、酸素、栄養、シグナルを得ています。
骨細胞
骨端でも血管新生が起き、骨端と骨幹の間に成
長板が形成されます。成
長板に存在する軟骨細胞は、骨端の血管から
IGF-1等のホルモンや、カルシウム等の栄養を得ています。
成長板
最終的に、思春期の前半に少量の
エストロゲンが間接的に骨の成長を促進し、思春期の後半は大量の
エストロゲンが成
長板に直接作用して骨を成熟させます。